【イベントレポート】TECH in 京都#1
こんにちは!HACARUSでエンジニアをしている内野です。いつもハカルスのエンジニアブログをお読みいただき、ありがとうございます!
今回は2022年3月30日(木)に開催した社外勉強会TECH in 京都 #1 の発表内容を当日利用した発表資料と合わせて、ご紹介させていただきます。
TECH in 京都とは?
TECH in 京都は元々ハカルスの社内で開催していた技術勉強会の拡大版として運営する技術勉強コミュニティです。
TECHは、Technology Enhancement Community by HACARUS の略で、技術好きの方々がラフに集って学べる場をつくり、京都から面白いことを生み出していこうという思いが込められています。TECH in 京都は機械学習に限らず、システム開発やチームビルディングなど、技術に関するテーマであればなんでも学べる場にしたいと考えています。技術に興味のある方であればどなたでも参加OKとし、オープンなコミュニティの運営を目指しています。記念すべき第一回目は、2022年3月30日にオンラインで開催し、約10名の方にご参加いただきました。データサイエンスが専門の方だけでなく、心理学、ハードウェアなど異なるバックボーンの方々にご参加いただけました。
イベントの内容
今回のテーマは「時系列データ予測手法の宇宙天気予報への応用」。LSTM・ガウス過程を用いた時系列データ予測手法を、宇宙天気に関連した物理量の予測に応用した事例を紹介しました。
発表内容について
【テーマ選択の動機】
「宇宙天気予報」という言葉を初めて目にした方もおられるかもしれません、宇宙天気というのは、太陽活動を起因とした一連の自然現象の総称のことで、宇宙天気予報は、太陽や地球周辺の宇宙の状態を把握し、実社会への影響を予報することと言えます。実社会への影響というのは、例えば通信障害や人工衛星の故障、あるいは発電所や変電所の誤作動による広域停電などがあります。実際には、大規模な太陽フレアが発生したときに、それがどれだけ実社会に影響を及ぼすかをすぐに予測し、対策をとらなければなりません。そのためには、日頃からこの分野の研究を行い、様々な対策をすぐにとれるようにするための準備を、事前に行っておくことが重要です。日本では、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)で研究が盛んで、最近では、総務省が「太陽フレア」の被害想定をまとめて対策に乗り出すなど、この分野の社会的重要性が非常に高まっていると感じます。
私は、大学院時代にこの分野に関わる研究をしており、機械学習を応用できる分野であると考えていました。今回は、宇宙天気予報で重要な1つの物理パラメータの時系列データを、LSTMとガウス過程を用いて予測するということを実践し、その内容を紹介しました。
【ガウス過程の採用理由】
発表内容についてより具体的な内容を知りたい方は、SlideShare のリンクの資料をご覧いただければと思いますが、なぜ LSTM に加えてガウス過程を用いて時系列データを予測したのか、ということについて触れたいと思います。
一般的には、時系列データの予測では、LSTMやGRUといった再帰型ニューラルネット(RNN)を用いることが多いと思います。ただし、単純にRNNを用いるだけでは、最も起こりうる予測値を出すことはできても、誤差を予測結果に含めることができません。社会的な意思決定が必要となる場面で、単純な予測値だけで判断するのは危険を伴うことだと私は考えます。例えば、災害など人命が関わる場面では、起こりうる最悪のケースを想定して判断を下さなければなりません。そのような場面で、予測誤差は意思決定のために重要な情報となると考え、予測誤差を含めるために、ガウス過程の応用方法の1つであるガウス過程回帰を、LSTMの予測と組み合わせることにしました。
なお、今回の内容は以下の論文を参考にしています。
M. A. Gruet,M. Chandorkar,A. Sicard,E. Camporeale, “Multiple-Hour-Ahead Forecast of the Dst Index Using a Combination of Long Short-Term Memory Neural Network and Gaussian Process”, Space Weather 16.11 (2018): 1882-1896.
【発表内容の要約】
当日は、以下のような構成で発表しました。
- 太陽地球環境系と宇宙天気予報について紹介
- LSTMを用いた宇宙天気予報の物理パラメータ予測
- ガウス過程回帰の導入
- LSTMにガウス過程回帰を加えた物理パラメータ予測
2. では、複数の物理パラメータを入力として、宇宙天気予報で重要となる物理パラメータをLSTMで予測しました。3.でガウス過程回帰を導入するための理論的な内容を確認し、最後にガウス過程回帰を導入した予測結果を紹介しました。理論的な部分までしっかり踏み込み、かなり学術的な内容になったため、参加者の反応が心配な面もありましたが、思ったより参加者からの反応もよく、様々な質問をいただいて議論が盛り上がりました。
当日活用したスライド作成を以下のURLから確認できますので、ぜひご覧ください!https://speakerdeck.com/hacarus/shi-xi-lie-detayu-ce-shou-fa-falseyu-zhou-tian-qi-yu-bao-hefalseying-yong
まとめ
手探りの状態で始めた第一回の TECH in 京都 でしたが、ハカルスのメンバーにとっても楽しく、そして非常に勉強になることが多かったです。しかしながら、会の運営方法等に関しては、まだまだ良くしていけるところがあると感じております。しばらくは試験段階の状態が続くとは思いますが、参加の皆さんの意見を取り入れながら、学びや発信の場としてさらに充実したところに成長させていきたいと思います