なぜ HACARUS は AI とロボットを組み合わせたか ～外観検査事業にかける想い～
初めて現場に入った AI ソリューション
2017年ごろ、私たちが AI ソリューションの提供を本格化した際に、人事データの解析から、農作物の収穫予測まで様々なご相談を頂きました。その中でも群を抜いて多かったのが、画像を用いた検査の自動化のご相談です。
外観検査は当時から AI の適用可能性を期待される領域の一つで、沢山のベンダーさんがしのぎを削っていました。その中で、私達の得意とする少量学習、エッジ実行、といった特性への期待感からお声がけ頂いていました。
そして外観検査に限らず、技術的な適用可能性を様々なプロジェクトで検証させていただいた中、ハカルスにとって初めての AI システムの現場導入が決まったのは、外観検査のプロジェクトでした。
そのプロジェクトでは既にお客様がお持ちの撮像装置に私達の AI を組み合わせることで、検査の工数削減を狙ったもので、導入から数年たった今でもご活用頂いています。
私自身は元々 IT 畑の人間で、いわゆるオフィスユースのソフトウェアの開発経験が長かったため、工場の現場で自分達の AI が稼働し、お役に立っている、という事実に大きな喜びを感じると同時に、AI の可能性を改めて感じた瞬間でした。
苦難の道
外観検査のお引き合いが多かったことや、先述の導入事例も後押しとなり、自社製品としての開発に乗り出しました。ラテン語の「外観」といった意味をもち、また英語の検査 (inspection) も想起させることから、SPECTRO と名づけました。
外観検査のプロジェクトは最初の検証から立ち上げまでにかかる時間が大きい事から、クラウドで簡単に試せるようにし、そこで作られたモデルをオフラインでもシームレスに使えるようにする、というコンセプトで開発を進めました。
製品のローンチ後、そのコンセプトに賛同頂き、トライアルを進めて頂く事は増えたのですが、一方で現場導入は中々増えていかず、製品に対して時にはお客様から厳しいお叱りの言葉を頂く事もありました。
端的に言えば、現場で利用するに足る性能を出せないことが一つの要因でした。もちろん、個社の課題に応じて前処理やチューニング、カスタマイズを施せば、ご活用いただく事は出来たのですが、それをどう製品として結実させるか模索の日々が始まりました。
HACARUS Check が拓いた世界
そんな中、私達が下した結論は、ソフトウェアだけでなく撮像の機能も含めたハードウェア込みのオールインワンパッケージとして製品を考え直すことでした。AI の性能は技術的な進展もあり、アルゴリズム単体で大差がつくことは減ってきました。むしろ検査の性能を左右するのは撮像の仕方の影響が大きい事もわかってきました。
と、言うは易しですが、検査装置という領域では後発も後発。既に競合が沢山いる中で、自社 AI の強みを引き出し、また既存の検査装置では解決できない領域を探した末に行きついたのが、今の HACARUS Check です。HACARUS Check が狙ったのは、ロボットアームと AI を組み合わせた 360 度検査によって、立体物の検査を省人化するということでした。
HACARUS Check では SPECTRO で開発したアルゴリズム資産はそのまま継承しつつWindows 向けのネイティブアプリケーションとしてフルリニューアルしました。これによって、Windows PC でロボット制御から AI 解析までワンストップで処理できるようにしつつ、またスタンドアロンのソフトウェアとしてもご利用頂きやすくなりました。
そうやって開発した HACARUS Check を導入したお客様から「何年も自動化に取り組んできて、これは難しいと思ってあきらめていた課題を解決してもらえた」という言葉をいただいた時に、私たちの模索の日々が間違っていなかったことを確信しました。
HACARUS Check 導入事例 動画：https://youtu.be/YFmYJCnsFQE?feature=shared
HACARUS が見据える未来
労働人口の減少が進む中、製造業の多くのお客様が工場の省人化・自動化を喫緊の課題としてとらえられています。
そのような背景の中、紆余曲折を得ながらここまで歩みを進めてきた HACARUS Check ですが、まだまだ多くのユースケース、課題解決にお役立ちできるよう更なる進化を遂げていきたいと考えています。
そのためには、様々なユースケースでお試しいただき、率直なフィードバックをいただくことが不可欠です。ぜひ私達に課題をぶつけてください。簡単に解決できるわけではないかもしれませんが、AI の可能性を信じる仲間たちとともに全力で取り組みます。
創業から10年を経て、より一層ものづくりの現場の課題解決につながる製品・ソリューションづくりに邁進してまいりますので、是非今後とも HACARUS にご期待いただければ幸いです。
代表取締役CEO 染田 貴志
